お経(経典)は、お釈迦様の教えですが最初から書き物になっていたわけではなく、弟子たちがお釈迦様の入滅後に、その教えを互いに確認し合って、それを暗唱しました。それが経典の原型です。
そして、お経(経典)が文字に残されるようになった時には、まだ紙がなかったため、樹皮を乾燥させたものなどに書かれていました。
現在では、法事やお通夜、お葬式等の法要や写経会、法話会講の集まりなどにお経を読む、「読経(どきょう)」をする習慣が見られます。
真言宗においては、一般壇信徒が行う、おつとめ「勤行式(ごんぎょうしき)」が定められています。
以上のことから、以下では高野山真言宗のお経について「勤行式」の手順(順番)で紹介します。
高野山・真言宗の勤行式のお経を読む手順(順番)
※[]内はお経の名前です。
1. [懺悔(ざんげ)]
これは深く反省の気持ちを持ち、確認することです。
ご本尊様に対して「ざんげ」することから始めます。
2. [三帰(さんき)]
これは「三帰依(さんきえ)」を略した言葉で、仏教徒としての約束事である「三宝帰依(さんぽうきえ)」の意志を表明したものです。
法を求める人々とともに、悟りを開かれた仏「仏宝(ぶつぽう)」と、その教え「法宝(ほうぼう)」と、その教えを信じ伝える人々「僧宝(そうぼう)」の、三宝に「帰依(きえ)」すること、つまり自分の身も心も投げ出して信じることです。
3. [三竟(さんきょう)]
「竟」は、「ついに、つきる、きわまる」等の意味があります。
「三竟」は、「三帰の念押し」です。
4. [十善戒(じゅうぜんかい)]
仏教に帰依した後は、それを体現するために10の善い行い(十善行)をすることをめざす、という決意の表明をします。
5.[発菩提心(はつぼだいしん)]
仏教徒としての行為を確認した後は、悟りの心を得ることです。
仏に対してのみに通じる真言で、それをお供えして祈ります。
6. [三摩耶戒(さんまやかい)]
自分の心の中に、御仏の心が見出せるようにと真言を唱えて祈ります。
7. [開経偈(かいきょうげ)]
お経をひもとくことを「開経」といいます。
開経偈の内容は「真理である仏様の教えにやっと出会うことができました。
この教えを解き明かすことができますように」ということを言っています。
8. [般若心経」(はんにゃしんぎょう)]
これは、簡単にいうと「大般若経(だいはんにゃきょう)」という全600巻にもおよぶ膨大な、お経の要旨です。
この世を成り立たせているものは「空」の境地であることを説いています。
尚、ここには「理趣経(りしゅきょう)」または「観音経(かんのんぎょう)」、または「和讃(わさん)」等を随意に入れます。
9. 「理趣経(りしゅきょう)」
人間の持っている煩悩(ぼんのう)を否定することなく、欲望を持つ身のままで成仏できるという即身成仏(そくしんじょうぶつ)の教えを説いたお経です。
10. 「観音経(かんのんぎょう)」
これは、観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)が33通りに姿を変えて、人々を救済してくれることを説いています。
11. 「和讃(わさん)」
「和讃」には「舎利和讃(しゃりわさん)」や「追弔和讃(ついちょうわさん)」があります。
「舎利和讃」の舎利は、お釈迦様の遺骨のことで、和讃は和文の詩句形式のお経のことです。
お釈迦様の遺徳(いとく)をたたえています。
「追弔和讃」は、故人を偲び、その霊を弔うものです。
これは、「ご詠歌(えいか)」とも呼ばれて、「和讃」に「節」をつけ、「鈴(れい)」や「打楽器の鉦(しょう)」に合わせて歌います。
12. [本尊真言(ほんぞんしんごん)]
「おん あびらうんけん ばさら だとばん」を唱えます。
13. [十三仏真言(じゅうさんぶつしんごん)]
多くの仏様の中で、特に私たちに直接救いの手を差しのべて下さる仏様からの供養のお経です。
14. [光明真言(こうみょうしんごん)]
これは、あらゆるものを照らしてくれている真言宗のご本尊「大日如来」の慈悲と知恵をたたえる言葉です。
この真言を7回唱えると、はかりしれない功徳が備わり、故人が「蜜厳浄土(みつごんじょうど)」に安らぐことができるそうです。
※「蜜厳浄土」は、亡くなった人が行く浄土です。
15. [御宝号(ごほうごう)]
仏尊の名前を唱えるため、「ご宝号」といいます。
仏尊は、大日如来と諸尊と宗祖である弘法大師の名前を3回ずつ唱えて、御加護を頂けるように願うものです。
16. [祈願文(きがんもん)]
勤行の終わりに仏様と先祖に祈るためのお経です。
17. [回向(えこう)]
あらゆる仏事の終わりに唱えられます。
これは、善い報いをもたらす行いを、亡き人や自分を含めた他の人々にふりむけることです。
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