高野山「勧学院」
- 創建年:1280年(弘安三年)鎌倉時代後期
- 開基:北条時宗
- 本尊:大日如来
- 宗派:高野山真言宗
- 寺格:金剛峯寺(総本山)支院
勧学院とは❓
勧学院(かんがくいん/旧字=勸學院)とは、元来、平安時代の藤原氏の大学別曹のことを指す。(藤原氏子弟の学問所)
821年(弘仁十二年/平安時代)に藤原冬嗣によって創設されたのが起源となる。
勧学院が創設された目的としては藤原一族繁栄のため、はたまた朝廷の確固たる地位に侍る藤原一族出身の大学寮学生を教育するための機関として創設された。
こと京師(京の都)においては、大学寮の南地(現在の京都市中京区西ノ京勧学院町)に在ったので、大学南曹(だいがくなんそう)とも呼ばれた。
1221年の承久の乱後に貴族社会が衰微すると、それに並行する形で鎌倉時代には消滅に到ったが、やがて興福寺などの有力寺院が寺内に僧侶育成機関を設けるようになると、その機関の名称に「勧学院」の名を用いた。
これが仏教宗学における勧学院の起源だと云われる。
「勧学」とは?
勧学(かんがく)とは、学問を勧励(かんれい/勧め励ます)すること。奨学(しょうがく)。
なお、浄土宗・浄土真宗本願寺派や天台宗では、宗学を極めた者の学階の最高位を「勧学」と称する。
高野山・勧学院の歴史
木版印刷事業
1277年頃より金剛三昧院では修学振興の一環から高野山衆僧たちの協力を仰ぎ、木版印刷事業が始められ、教学のテキスト本が刷られた。
刷られ始めた頃の奉行であった鎌倉幕府宿老の安達泰盛の助勢に加え、木版版下制作に金剛峯寺僧の信芸(しんげい)や、能海(のうかい)、快賢(かいけん)たちも参画した事から、金剛峯寺との関係も良好になった。
勧学院の創建
1280年(弘安三年)に鎌倉幕府第8代執権の北条時宗(ほうじょう ときむね)が高野山内の僧侶の教学・修練のための道場として、金剛三昧院(こんごうさんまいいん)境内に「勧学院」を建立する。
造営は奉行職にあった安達泰盛(あだちやすもり)に行わせたことが江戸時代後編纂の紀伊国名所図会にも記される。
この当時、金剛三昧院は四宗兼学の学問寺院として発展の途にあり、まさに高野山における中心的な一堂だった事実はあまり知られていない。
北条時宗の厚遇により金剛三昧院は高野山内で孤立する
北条時宗は勧学院の他、修学院を金剛三昧院境内に造営するなど、金剛三昧院を厚遇したことから、やがて高野山内において他院の高野山僧たちとの寺格などを巡る確執が生じることになる。
以上のような変遷を経て金剛三昧院第10世 良俊(りょうしゅん)長老は、金剛峯寺の衆僧たちの逆鱗に触れて退出下山を申し渡されるなど、その”確執”は、まるで”角質”が減少するかの如くに、さらに”確執”が深まった。3連芸術的トゥループ完成 ヒュ〜
1318年(文保二年)に現在地に移建される
覚園寺(鎌倉の古刹)の寺僧・道戒上人の上申によって、1318年(文保二年)に後宇多法皇が院宣を発し、勧学院のみが現在地(壇上伽藍の蓮池隣地)へ移建築される運びとなる。
後宇多法皇は移建の際の料所として岳牟田荘(肥後国)を寄進し、自らの御願寺に定めた。
金剛峯寺との融合化が加速する
このように勧学院のみが金剛三昧院から出されたわけだが、修学研鑽の論議所として、はたまた高野山内における管理的立場を担うように推進されると、徐々に金剛峯寺との氷壁も溶解するに到り、やがて金剛峯寺との合併が図られていく。
高野山を危険視した鎌倉幕府
この頃の鎌倉幕府は高野山を一大勢力と見なしていたが、高野山に対して高圧的な態度を採るのではなく、あえて懐柔策(かいじゅう/うまく飼いならすこと)を採って逆に高野山への協力を惜しまなかった。
高野山を監視するという本意を据えながらも、霊場信仰の発展や山内の文化向上のために最大限の援助を行った。
その一環として、それまでの木製の町石(ちょうせき)を石造の町石に交換する形で新たに九度山の慈尊院(じそんいん)から壇上伽藍(だんじょうがらん)を介し、果ては奥の院・大師廟に到るまでの総計200を超える町石と、里石4基を建立するという大事業に着手した。
現在でも勧学院は修学・修練の場
勧学院は現在でも教学研鑽・修練の道場として用いられる。
毎年9月(非公開)に執行される勧学会(かんがくえ)では、山内の各寺院で修行を積み、金剛峯寺に認められて衆分(しゅぶん/金剛峯寺における最下級の僧侶を指す)となった僧たちが高野山の僧としての作法や仕来り、経典、大師(空海)の著書などについて約1ヶ月間を要して学び、問答を繰り広げる。
なお、この行事は完全一般非公開の儀式となる。
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