高野山・壇上伽藍「逆指しの藤(さかさしのふじ)」
高野山・壇上伽藍「逆指しの藤」の読み方
「逆指しの藤」は「さかざしのふじ」と読みます。
漢字では「倒指の藤」と書いて「さかざしのふじ」とも読みまする。
高野山・壇上伽藍「逆指しの藤」の名前の由来
「高野山・壇上伽藍 准胝堂(じゅんていどう)」と言う堂舎の裏側には、藤の木が自生しています。
高野山内にある七株(7本)の霊木のうちの1本とされ、古来、その名が受け継がれています。
この藤の木は「祈親上人(きしんしょうにん)」と呼称する僧侶によって手植えされた藤の木です。
祈親上人とは平安時代後期に活躍した「定誉(じょうよ)」もしくは「持経上人」と呼称する僧侶のことであり、もとは奈良県葛城郡出身で同じ奈良県の興福寺に在籍していました。
ある日の夜、定誉は、霊夢(れいむ=神仏のお告げの夢を見る)を見て1016年(長和5年)高野山へ登ることになります。
そして高野山へ登った後、定誉は高野山の姿を見て驚くことになります。
高野山・壇上伽藍「逆指しの藤」の歴史
壇上伽藍の焼失と荒廃
実はこの頃、高野山は同じ真言宗である現在の京都駅付近に位置する「東寺(とうじ/護国教王寺=きょうおうごこくじ)と対立していたため、伽藍が廃れていました。
また、この状況を後押しするかの如く、994年(正歴5年)に落雷が起こったために伽藍全体が焼失してしまい、徐々に荒廃していきました。
定誉が見た高野山の様子は、神聖な霊峰・高野山とは思えないほどの廃れようで、定誉は霊夢のお告げは高野山の復興であると確信しました。
そして復興に取り掛かる際、復興が無事に成就することを祈念して、1本の藤の木を准胝堂の裏側へ「逆さ向き」に植えました。
「逆さ向き」に植えた理由とは、一種の「願掛け」のためと云われています。
逆指しの藤がもたらした数々の幸運
藤を逆さ向きに植えた後、不思議なほど幸運が次々に起こります。
まず、定誉は自配下の「勧進聖(かんじんひじり)」を招集して、日本全国へ浄財を集めるための勧進活動を行い、浄財が予想外に集まります。
また、勧進の最中、ある人物と運命的な出会いを果たします。
その人物とは「仁海(にんかい)」と呼称される真言宗の僧侶であり、仁海は当時「祈雨法(きうほう/=あまごい)」と言う独自の祈祷方法を会得しており、自在に雨を降らすことができたと言います。
そんなことから日本の貴族をはじめ、日本を飛び越えて中国にまでも名前が知れ渡っていました。
その仁海の誘いで1023年(治安3年)に、時の権力者である「関白・藤原道長」が高野山へ参詣するに至ります。
ちなみに藤原道長とは平安貴族を代表する存在であり、貴族の栄華を極めていた人物です。
藤原道長と高野山
道長はこの参詣を機として、まず、高野山・奥の院の「御廟橋」と「拝殿(現・燈籠堂)」を寄進(造営)しています。
さらにこの後の1026年(万寿3年)、道長は娘の「上東門院彰子」を仏門へ送り出し、ここ高野山奥の院にて「剃髪の儀式(僧侶になること)」を執り行っています。
以降、高野山は藤原氏から全面的に庇護を受けるようになり、藤原氏の財力と権力を背に受けて序々に復興し、従来の高野山の威容を回復していくことになります。
一方、摩訶不思議なことに定誉が植えた藤の木も「逆さ向きに植えられた」にも関わらず、高野山の繁栄と比例するかのようにどんどん大きく育っていくことになります。
定誉は高野山きっての発明家だった?!
その他、実は定誉は発明家としても著名であり、高野山の寒い冬に「体温を奪われないよう保つための方法」などを考案し、高野山の興隆にも尽力しています。
定誉は後に功績を讃えられ「祈親上人」の他、法華経の教典を持経していることから「持経上人」とも呼ばれて現代においても伝説が語り継がれています。
現在の藤は最近植えられたもの
現在見られる藤は残念ながら、同じ場所に近年、植栽されたものです。
紀伊続風土記によれば、「永正の災いに焼枯せり、またその白藤を植継ぎてなお蔓衍(まんえん)す」との一文が見えます。
これは、永正18年(1521年)に発生した「永正の大火」の影響により枯死し、その後、跡地に白藤が植栽され、植え継ぐ形で名木の名前が語り継がれてい‥‥‥申す。グホっ
「逆指しの藤」の見頃時期や開花状況
この藤は例年5月GWあたりから開花が目立ちはじめ、5月中頃になると満開に花を咲かせた藤が拝めまする。
高野山・壇上伽藍「逆指しの藤」の場所(地図)
逆指しの藤は壇上伽藍「准胝堂」「御影堂」の裏側に自生しています。その姿は定誉が生きていた頃の面影をソっと今に伝えています。
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